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ゴルフのコックを科学的に解明|原理は?リリースのタイミングは?



ゴルフのコック(コッキング)とはいったい何?


ゴルフのコック(コッキング)については色々な情報があります。

どの情報でも共通していることは

・バックスイングトップで軸手の手首を90度に折る

ということです。もう少し正確に説明すると、

・アドレス時のアームシャフト角140~150度に対し、バックスイングトップでアームシャフト角を90度程度まで狭める

となります。アームシャフト角とは、腕の線とシャフトのなす角、即ち、親指方向に手首を曲げる「撓屈」の角度のことです。


コック1



その目的は、「スイングが安定」、「飛距離が出る」、「スライスがでにくい」等になっています。

そしてその原理が「金槌と同じ」、「インパクトの直前までコック(タメ)を維持」、「コックは自然にほどける」となっています。

でも、これを聞いて「コックを理解できた!!」と思える人はどの位いるのでしょう?

「理解できているよ!!」という人は、以下の2~3の疑問に対する説明をしてみて下さい。

もし説明が難しければ、まず、上の原理を全て忘れましょう。

そして4以降を読んでみて下さい。科学的見地からコックに関してすっきり理解できるように説明していきます。

1.金槌の作用点はコックの方向

2.コックの方向は作用方向と直交

3.コックをインパクトまで維持したら物理的にボールに当たらない

4.コックの動きをしっかり理解しよう

5.トッププロのコックのリリースを調べる

6.コックのリリースには整定時間が必要

7.コックのリリースは肩甲骨の下制・下方回旋中に行う

8.コックのリリースのタイミングは物理的に決まってくる

9.コックとヒンジは同じタイミングで使わない

10. ヒンジコックとは?

では早速説明を始めましょう。

1.金槌の作用点はコックの方向



「コック」を使えば金槌で釘を打つのには適している。

でもこれは「コック」により金槌の先端の速度が上がり、その方向に釘があるから。

つまり、作用点(金槌で釘を叩く位置)に加える力の方向とコックを開放した時の「金槌の口(平らな面)」の移動方向は一致する。

コック2

2.コックの方向は作用方向と直交


ゴルフの場合は「インパクト」位置での「コック」を使う方向は、ボールを押し出す方向と90度違う。下図を見れば一目瞭然。

「コック」によるクラブヘッドの移動方向はゴルフの作用点(ボールを打つ位置)では「トップ」と「ダフリ」の方向。

少なくともボールをヒットする前までには、「コッキング」で曲げた「左手関節の角度」を元に戻さなければならないはず。

金槌の原理では、ゴルフの「コック」の効果は説明できない。

コック3

次に、「インパクトの直前までコック(タメ)を維持」はどういう意味か?

「直前」の意味は「(空間的に)あるもののすぐまえ」。

すぐ前でアームシャフト角を動かすと「トップ」や「ダフリ」のリスクはあるが、飛距離を生み出す説明になっていない。

「スイングが安定」、「スライスがでにくい」については更に説明できていない。

残念ながら、ゴルフのWEB配信で、この疑問を論理的に解決してくれているものを私は見たことが無い。

3.コックをインパクトまで維持したら物理的にボールに当たらない


「ではコックは自然にリリースされる」についてはどうだろうか?

下図のようにアドレスを取り、ボールの位置にあるクラブフェイスを左手首を撓屈して上に挙げてみる。アームシャフト角を90度近くまで変えられると思う。

コック4


次にその状態でバックスイングを行い、同じ位置にクラブフェイスが戻るようにダウンスイングしてみる。

誰でも問題なくできると思う。これはコックは自然にリリースされるのではなく、維持しようと思えば維持できることを示している。

インパクトでもコックを維持し続ければどうなるか?上の図を見ても明らかなように、クラブヘッドはボールの遥か上を通る。これではボールは打てない。

「コックしたままインパクト」は、このように物理的に考えて実験してみれば、ボールを打つのが不可能なことが容易に判る。

4.コックの動きをしっかり理解しよう


1~3について納得できれば、話は簡単である。まず、コックに関してキチンと定義し、その動きを理解することから始めよう。

コック(コッキング)は、下図のようなトッププロのスイングから考えると、以下のように説明できる。

コックとは、

・アドレス時のアームシャフト角(140~150度)に対し、バックスイングトップでアームシャフト角を狭める(90度)こと。

・アームシャフト角とは左手首を撓屈(親指方向に曲げる)した時の左腕とシャフトのなす角のこと。

・「コックの方向」とは、バックスイングトップで「アームシャフト角を狭める方向」と同じ意味になる。

・バックスイングトップで狭めたアームシャフト角を、インパクトまでにアドレス時のアームシャフト角に戻すことで、ヘッドスピードを上げ、飛距離を伸ばす効果がある

・シャロースイングの場合、インパクト時は掌屈(手の平方向に曲げる)も行われる。

・掌屈すると左手首はアドレスよりも前方にあり、後ろのアングルから見るとアームシャフト角は広がって見える。

・違う角度から見ると、アドレス時と同じアームシャフト角(140~150度)に戻っている。

・アームシャフト角を元に戻すのは左手首を尺屈(小指方向に曲げる)することで行う。この動作を「コックをリリースする」と定義する。

コック5
コック11


上記説明の中で、「コックのリリース」によって飛距離が伸びる理由は何か?

「コックのリリース」のタイミングは何処か?それらの理解が重要である。

次章からそれらについて科学的に解明していく。

5.トッププロのコックのリリースを調べる


下図はトッププロのドライバーのスイングを所定の時間毎に重ね合わせた図。

アームシャフト角を調べるために、腕とシャフトの位置のみを抽出して表示している。

この図を見ると、ダウンスイングには3つの状態があるのが分かる。

①アームシャフト角が70度で固定している青線領域

②アームシャフト角が70→130度に変化する赤線領域

③アームシャフト角が130度に固定された空色線領域

コック6


青線領域はバックスイングトップの左肩甲骨が挙上・上方回旋、右肩甲骨の内転、左肩甲骨の外転している状態から、肩の回転に合わせて、下制、下方回旋が始まる初期段階。

フェイス面が上を向いているのが分かる。フェイス面は左手の甲とほぼ平行にアドレス時にクラブを握れば、左手甲側の手袋のマークで確認できる。

この間、アームシャフト角は70度をキープしており、コックのリリースは行われていない。

赤線領域は肩甲骨の下制・下方回旋の後半と、右肩甲骨の外転、左肩甲骨の内転。フェイス面がしっかり見えるようになる。

フェイス面が見えるのは左肩甲骨による左手の回外(手を外側にひねる)が行われていることを示す。

アームシャフト角は70→130度に変わっている。コックのリリースはここで行われている。

空色領域は左肩関節の水平外転と外旋、回外筋による左腕の回外が行われている。

回外により、見えていたフェイス面がインパクト時にボールを打つ方向と直交している。

その間、アームシャフト角は130度をキープしている。コックのリリースはこの時点では終了している。

なお実際の写真ではアームシャフト角が予想より短いが、クラブヘッドは斜め円周軌道なので、斜視状態から多少実際とは異なって見える。また個人差もある。

6.コックのリリースには整定時間が必要


このダウンスイングの中で、もう一つ意識する必要があるのは、調整区間(整定時間)の存在である。

これが何かは実験をしてみると分かり易い。

下左図はドライバーを持ったアドレス状態である。同じようにドライバーを持って構えてみる。

次に撓屈だけでアームシャフト角を130→90度に変え、尺屈を使いクラブヘッドを振り下ろし(アームシャフト角を90→130度に戻す)、地面から5cmのところで止めてみる。

上手くできるだろうか?大半の人は地面を叩いてしまったのではないだろうか?

コック7


実はクラブヘッドを振り下ろすと、クラブヘッドにはその速度を維持しようとする慣性力が働いている。

でもクラブヘッドは直ぐには止まらない。よって、目標地点をオーバーして地面を叩いてしまう。その行き過ぎた距離をオーバーシュートと言う。

原理は「車は急には止まれない」と同じ。動いている物体を目標位置に止めるには、制御が必要である。

具体的には、その慣性力に対抗する"上にクラブヘッドを持ち上げる力"(撓屈)を上中図のように目標地点近くで加えなければならない。

撓屈で上にクラブヘッドが動き始めると、目標地点で今度は、"下にクラブヘッドを下げる力"(尺屈)で上へのオーバーシュートを止めようとする。

これを何度か繰り返すと、振れ幅が小さくなり目標地点に到達する。この位置調整に必要なのが整定時間であり、一つ前の図の橙線領域で表している。

但し、この制御や整定は上記のような力を意識的にかけるのではなく、アームシャフト角を130度に戻すと無意識に行われる筋肉の動きである。

上右図は縦にアームシャフト角、横に時間軸を取ったコックのリリースを表したグラフ。

もしこの整定に時間がかかり過ぎ、インパクト位置を超えてしまうと、トップやダフリの原因となる。

ノーコック打法が安定したスイングとして推奨される理由は、アームシャフト角を変えないのでこの整定時間が無い。その分、ミート率が高く安定するから。

7.コックのリリースは肩甲骨の下制・下方回旋中に行う


また、回外には、肩甲骨による左腕の回外と、肩甲骨を使わない左肩関節の外旋・回外筋による回外があり、それぞれ役割が異なる。

肩甲骨による回外はフェイス面の角度を変えると共に、同じ角度クラブヘッドの軌道も変える。よって、フェイス面とヘッドの移動方向は下左図のように平行なまま。

手を前に伸ばし肩甲骨を上げると自然に内側に腕を捻った状態になる。肩甲骨を下げると腕の捻りは元に戻る。これが肩甲骨による回内、回外動作。

肩甲骨の動きとしては上に挙げる動作が挙上と上方回旋、下に下げる動作が下制と下方回旋。この回旋が肩甲骨の角度を変え、腕の回内、回外となる。

一方、左肩関節の外旋・回外筋による回外はクラブヘッドの軌道は変えずにフェイス面だけを回転させる。手の返しでは下右図のようにフェイス面を変えることができる。

手を下げた状態から肘を曲げて手を前に上げる。手の平を左右に動かす動作が外旋と内旋。

手を下げた状態から肘を曲げて手を前に上げる。その状態で手首を外側、内側に捻る動作が、上・下橈尺関節を使った回外、回内動作。

肘を伸ばした状態ではこの両方を使って手を捻る駆動範囲が大きくなる。

コック8


トッププロが赤線領域でコックをリリースしているのにはキチンとした理由がある。

赤線領域でコックをリリースすれば、クラブヘッドの移動方向とコックのリリース方向は同一。

赤領域で使われている筋肉は、肩甲骨の下制・下方回旋と肩関節の伸展。左手関節の尺屈は別の筋肉が使われる。

よって、ヘッドスピードアップは独立に行われるので、ヘッドスピードはその和となる。

すると下図のように同じ所要時間でヘッドスピードを上げることができる。この図ではシャフトを短く持って説明しているが、シャフトが長けば長い程、その効果は高い。

ヘッドスピードアップは、その速度を維持する慣性力となる。

回外筋による回外はその速度を維持したままシャフトを回転し、ボールを打つ方向とフェイス面を直交させる。

よって、コックのリリースによるヘッドスピードアップは、そのままインパクト時のヘッドスピードを上げ、飛距離アップにつながる。

整定時間も長く取れるのでミート率が高くなる。

コック9

しかし、この場所でコックをリリースせずに、インパクト近くまでコックを維持するとどうなるか?

青色領域では左手の回外により、コックのリリース方向はクラブヘッドの進行方向から外れていく。

インパクト位置に近づく程、重力は有効利用できず、ヘッドスピードアップの効果は下がる。

インパクト位置ではコックのリリースは上下方向。整定時間も十分に確保できなくなるので、ダフリやトップの危険性が増す。

勿論、維持したままではクラブヘッドはボールの遥か上を通過。リリースしなければ何の効果も生み出さない。

このように「インパクトまで維持」、「インパクト直前のコックのリリース」や「インパクト直前にコックがほどける」は科学的根拠が何もない。デメリットにしかならない。

8.コックのリリースのタイミングは物理的に決まってくる


では、トッププロは意識的に赤線領域でコックのリリースを行っているのか?

実はそのようなことを意識しなくても、シャロースイングを実践しているプロの場合、無意識に赤線領域でコックのリリースが行われる。

下図はダウンスイングの分解画像に各場所でかかる力を示した図である。

シャロースイングでのダウンスイングは肩の回転に合わせ、肩甲骨の下制・下方回旋と肩関節の伸展から始まる。腕は振り下ろされるので、腕にかかる重力を有効活用できる状態。

この時のクラブヘッドを動かす力は地面と水平な方向で強く、それと同じ力の慣性力が移動と反対方向に働いている(紫矢印)。

この慣性力とは、クラブヘッドの運動状態を維持しようとする力。その運動状態を変化させる力と反対方向に発生する力である。

コックをリリースするための尺屈は慣性力と逆方向。その力(赤矢印)は慣性力よりも弱い。

最初からリリースを行うため尺屈しても慣性力に阻まれて、緑線領域ではコックをリリースすることができない。

尺屈してもできない状態になると、筋肉にエネルギーが蓄えられる。更にクラブヘッドの慣性力がシャフトをムチのようにしならせる。これが「タメ」の正体である。

逆に考えると、その慣性力を使ってコックを入れる動作は行い易い。バックスイングトップでコックを入れる人が多いのは、この慣性力を利用し撓屈するためである。

コック10

肩甲骨の下方回旋は後半になると腕が回外し、クラブヘッドの移動方向が下向きになる。

緑色領域の終盤ではクラブヘッドの慣性力は小さくなり、角速度アップにより遠心力が大きくなる。

クラブヘッドの移動方向は下向きに変わると、重力と遠心力の方向(分力)がコックのリリース方向と同一になる。

青色領域で慣性力が次第に小さくなり無くなる。重力と遠心力のサポートを受け、コックのリリースが効率よく行える状態になる。

コックのリリース(尺屈)に加え、シャフトのしなりは一気にもとに戻ろうとする。このエネルギーの放出が「タメ」の解放と呼ばれるものであり、ヘッドスピードを上げていく。

左肩関節の水平外転、外旋、左腕の回外筋による回外が行われる水色領域では、既にコックのリリースは終了している。

上記は仮説だが、物理的な矛盾はない。

「コックは自然にリリース」等の言葉は、プロが意識しなくてもシャロースイングで、自然にコックを有効利用できているから発せられる言葉の可能性が高い。

ではアマチュアにとってコックを使うのは意味があるのだろうか?少なくとも、以下の人はコックを使うメリットは小さいと考える。

①シャロースイングを行わない人
⇒一般のスイングではダウンスイングトップから回外筋を使った回外が行われる。結果、ヘッドスピードアップの効果は半減する。

⇒一般のスイングではダウンスイングトップからのスイング速度が遅く、慣性力に対し尺屈する力が勝り、重力を生かす前にリリースされてしまう。

②バックスイングトップで軸手の肘を大きく曲げる人
⇒もともと肩甲骨の下制・下方回旋、肩関節の伸展を有効利用できていない。コックをリリースするタイミングがバラツキ、安定性が下がる。

③手首の撓屈、尺屈力が弱い人
⇒オーバーシュートの補正を行う整定時間の短縮は手首の撓屈、尺屈力の強さ。これが弱いとインパクトまでにアームシャフト角を安定させることができない。

以上のことから考えると、シャロースイングを行っているプロは無意識にコックを使っており、アマチュアにコックを上手く教えることが難しい。

アマチュアのフォームを理解し、回外とコックのリリースのタイミングを把握した上で、コックが有効か否か判断して指導する必要がある。

問題はコックを教える指導者が、コックのメカニズムを理解しているか?である。

一流プロの中でもノーコックでダウンスイングするプロはいる。肩甲骨を使った下制・下方回旋、肩関節の伸展とシャロースイングで、十分にヘッドスピードは上げられるから。

9.コックとヒンジは同じタイミングで使わない


最後に「ヒンジ」の使い方について説明する。

ゴルフ用語では、この右手首関節の背屈を「ヒンジ」と言う。「ヒンジ」を「コック」と並列に扱っている資料もある。「ヒンジコック」という新用語まで作られている。

理由は「コック」をインパクト直前でほどくことに疑問を持ち、「ヒンジのリリース」ならばボールを押せる方向と考え、「コック」を「ヒンジ」にすり替えている。説明し易い。

しかし、「コック」は今まで説明してきたように、ヘッドスピードを上げるための技術。

一方、「ヒンジ」は右手関節で使われ、バックスイングトップを作る時に不可欠な技術。

全く別の技術である。これらを一緒にしてしまうと何を信じてよいか分からなくなる。

根本的な違いは、コックとヒンジのリリース位置。下図のように、コックのリリースは赤矢印の範囲だが、ヒンジのリリースは右肘関節の伸展と同時に青矢印の範囲で行われる。

コック12


この図を見ると、ヒンジによってクラブヘッドが大きく動いているように見える。そのため、ヒンジの効果は「クラブヘッドが走る」と思っている人もいる。

ヒンジを元に戻す動作はピンタと同じ方向。金槌と同様に、ピンタに例えてヘッドスピードを上げる説明をしていることも多い。しかしこれも例えが誤り。原理が全く違う。

では、ヒンジの具体的役割を分かり易いように説明していく。

下左図はアドレスの模式図である。両肘関節を伸ばした状態で、左手首も伸びている。クラブを両手で握っているので、僅かに左肩が上がり、僅かに右手首関節が背屈している。

この状態ではクラブは殆ど体の軸上にある。

下中図は体の軸からクラブを右方向に動かした図である。両手でクラブを握っているので、関節の構造上、右肘関節の屈曲と右手関節の背屈(ヒンジ)を行う必要がある。

そして下右図がトッププロのバックスイングトップである。左肘関節を曲げず、左腕と甲が真っすぐな状態を保っている。

別の角度から赤丸部分を拡大したのがその下の図である。下中図と同様に、変わらず右肘関節の屈曲と右手関節の背屈(ヒンジ)が行われている。

バックスイングトップも、体の軸から大きくクラブを右方向に移動する必要がある。

下中図と下右図の違いは、腰の回転、背骨の旋回、肩甲骨の挙上・上方回旋の有無である。

両手でグリップを握った状態で肩甲骨の挙上・上方回旋を行うと、右腕の回外、左腕の回内も行われる。しかし、両肘、手首の形はまったく同じ。

このように、右肘関節の屈曲と右手関節の背屈(ヒンジ)は、両手でクラブを右方向に引くときには、不可欠な関節の動かし方であることが分かる。

コック13


話は脱線するが、このようにバックスイングでアドレス状態から、右肘関節の屈曲と右手関節の背屈(ヒンジ)を最初に行い、左手関節の掌屈もそれと同時に行うこともできる。

腰の回転や背骨の回旋はそれと同時に行われるが、肩甲骨の挙上はその後で行われる。既に手の形やコックは形成されているので、バックスイングでの慌ただしい動きは少ない。

この方法は「アーリーコック」と呼ばれている。この方法を推奨するコーチもいる。コーチがスイングするとシンプルで簡単そうに見えるのが特徴。

但し、アドレスから手の動きだけでクラブを引いたつもりになり、腰の回転や背骨の回旋が不十分になり易い。

更に、右肘関節の屈曲と右手関節の背屈(ヒンジ)を先に動かすと、骨の構造上肩甲骨の動きに制約が出る。引き過ぎないタイミングや力加減が難しい。

見た目ほど簡単ではない。「アーリーコック」が合っているか否かは、両方の打ち方を試して自分で判断するしかない。

話を元に戻そう。では冒頭のヒンジのリリースによる「クラブヘッドが走る」についてはどうだろうか?

下左図がダウンスイングで右肘関節の伸展と右手関節の掌屈(ヒンジのリリース)を行ったときの模式図。

シャロースイングを想定しているので、背骨の側屈が行われている。体の軸上までクラブの位置は戻っているのに、クラブヘッドはあまり動いていない。

実は、右手関節の掌屈(ヒンジのリリース)は右肘関節の伸展のセットで使われ、クラブのグリップ位置を軸上に戻す役割しかない。

クラブヘッドはまだ右サイドにある。これはバックスイングで右腕が回外し、左腕が回内した状態のままだから。

それに対して下右図では、右肘関節の伸展と右手関節の掌屈(ヒンジのリリース)に加え、右腕の回内と左腕の回外を行った時の模式図。

クラブヘッドが大きく動いている。右腕の回内と左腕の回外が、クラブヘッドを走らせるのに有効であることが分かる。

しかし、右腕の回内と左腕の回外を行う筋肉はそれ程強くなく、肩の回転や右肘関節の伸展を行う強力な筋肉を動力として連動して動かす必要がある。

その連動して動かす関節の一つが右手関節の掌屈(ヒンジのリリース)である。しかし掌屈力もそれ程強い力ではない。上記連動を上手く行うサポート役である。

これらの筋肉を連動させることで、左手のアームシャフト角をアドレス時と同じ角度に維持することができている。

この掌屈を意識しすぎると、連携を崩し、手をこねる動作につながる。アームシャフト角も維持し難くなる。あまり意識しない方が良い。

コック14


10.ヒンジコックとは?


では「ヒンジコック」とは一体何を指しているのだろうか?

本来のコックとは、左手のアームシャフト角をバックスイングトップで90度近くに左手関節を撓屈する状態のこと。

両手の平を合わせているので、右手関節は背屈している状態。これがヒンジ。

この時、両腕は直交した状態なので、左手の撓屈に連動する右手の動きは上・下橈尺関節を使った回内。

右肘関節が屈曲している間にコックのリリース(尺屈)は行われるので、連動する右手の動きは上・下橈尺関節を使った回外。ヒンジはそのまま維持される。

それに対し、インパクトの瞬間は右肘関節の伸展と右手関節の掌屈(ヒンジを戻す)が行われている。

手を返す動作として上・下橈尺関節を使った回内、回外は説明したが、それに連動して右手関節の尺屈(小指方向に手首を曲げる)も行われる。

コック15


この右手関節の尺屈は左手のコックのリリースと同じ動きだが、早い段階で左手のコックのリリースは終了しているので、本来のコックとは無関係の動き。

即ち、「ヒンジコック」とは、インパクト付近での右手関節の動かし方を指しており、左手関節の使い方を示す「コック」とは、全く別の技術と考えると分かり易い。

インパクト付近でアームシャフト角をキープするために、不可欠な右手関節の動かし方が「ヒンジコック」である。よって、使う?/使わない?を論じる技術ではない。

他のゴルフの技術についても筋肉・関節の動きで理解してみませんか?

コックとヒンジの役割については理解できたであろうか?

実はコックを使う技術より、シャロースイングを覚えた方が、ヘッドスピードアップにははるかに有効である。

一流のプロはノーコックでも必ずシャロースイングを行っている。

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