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ゴルフのシャンクはなぜ起こる?ヒールに当たるのが原因ではない!!
ゴルフ用語でシャンクとは、真っすぐに打ったはずのボールが45度程度斜めの方向に異音と共に飛んで行ってしまう現象のこと。
ゴルフの経験があれば、誰でもシャンクの経験はあると思います。
その原因として、Web上の殆どのゴルフレッスン情報では、「シャンクとは、ボールがシャフトの付け根(ホーゼルやヒール)に当たること」と説明しています。
シャンクとは英語で足のスネの事。シャフトの付け根をスネに例えて命名されたと思います。
この情報をベースに、殆どのゴルフレッスンでは、ボールがホーゼルに近づかないようなスイング方法を「シャンクを直す方法」として教えています。
でもこれではシャンクは直りません。
私も以前は「重度のシャンク病」で、コースではアイアンの代わりにウッドを短く持って使っていました。
Webで色々調べて「直す方法」を殆ど全て試しましたが、一瞬治ってもまた直ぐシャンクが復活。同じ方法なのに今度は直らない・・・なんか違う・・・
「明らかにヒールに当たっていないはずなのにシャンクする」と思っていました。
直らない理由は簡単でした。その根本が間違っているから。
確かにヒールに当る(ヒールシャンク)場合もあります。でもそれはシャンク全体の1%以下。
ゴルフプロがシャンクを再現しようとしても、連続して上手くシャンクしているビデオ情報が存在しないのは、ヒールシャンクを打つには数ミリの精度で振りぬく高いスイング技術が必要だから。
フェイス面中心から数cmも内側のヒールに当ててしまうスイングをする一般のゴルファーが、そんな精度の高いスイング技術を持っていると思いますか?
実は、一般的なシャンクの原因は別にあります。その原因を理解し、シャンクを何度でも再現してみて、その原因を排除する直し方を実践すれば、シャンクは確実に直ります。
ここでは以下の順に分かり易く「シャンクとは何か?具体的な直し方は何か」を、実験で確認しながら詳しく説明していきます。
では早速説明を始めましょう。
1.シャンクの実験検証
シャンクは「ヘッドの付け根(ホーゼル)、クラブのヒールに当たるのが原因」が定説。
では、それが本当か、簡単な実験を行ってみよう。
得意なアイアンでボールを置く位置を横にずらしてアドレスを取り、ボールを打ってみる。クラブのフェイス面に当たるボールの位置がずれていくと思う。
それが難しければ、アイアンのフェイス面を固定し、そのフェイス面に当たる位置を変えてボールを当ててみる簡単な方法でも良い。自宅で直ぐできる。
誰もがシャンクを打ちたくないので、このような確認をする機会は少ないと思うが、心配する必要は無い。
「シャンク」になるだろうと思う②の位置でボールをヒットしても、「シャンク」性のボールは打てないのが分かるはず。
私が確認した結果では①、②は正常な方向にボールが飛ぶ。③は少し異音がするが、ボールは15~30度程度スライス方向に飛んでいくだけで、いつも困っている「シャンク」の球筋ではない。
④は鈍い低音でボールは前方に転がってしまう。それ以上はフック方向にボールが転がっていく。
横へのボールの移動距離だが、①~②は5,6センチ、③は数ミリ、④以降は1センチ程度。
自宅での実験検証ならば、フェイス面にボールを当てて、跳ね返ったボールの軌道を調べる。③に該当するのはボールがホーゼルに当たり、90度方向に跳ね返る数ミリの範囲。
この実験検証では、「シャンク」性の当たりはなかなか打てない。
2.ヒールシャンクを物理的に確認しよう
原理を確認しよう。①はキチンとボールが飛ぶので除外する。
ヒールに近い場所で、インパクト時のネックとボールの位置関係を示したのが、下図②、③、④。
②ではヒールと重なって見えるものの、ボールは先にフェイス面に当たり、ヒールには当たっていない。ボールは普通に前に飛ぶ。
アイアン自体が、球体であるボールを打つ時に、シャンクが出難いフェイス面とフェイス位置、シャフト取り付け位置と、ヒール曲面形状に設計されている。
④はホーゼル・ヒールだけに当たっており、ホーゼルはフェイス面のようなボールを上に上げる角度を持っていないので、上にボールを上げることは難しい。
ボールをヒットした瞬間の、ホーゼル・ヒール曲面とボールの接面で跳ね返るので、接面に応じランダムな方向に転がるだけ。
試しにクラブを逆さまに持って、キチンとスイングしてグリップの方でボールを打ってみて頂きたい。
ボールは上に殆ど上がらず転がるだけ。更にグリップに当ててシャンクと同じ方向に飛ばすのが、いかに難しいか分かると思う。
シャンクになる可能性があるのは③の状態。この状態を詳しく調べていく。
なだらかな曲面のヒール部分でボールをインパクトした③では、その曲面の接面と直交した方向にボールは跳ね返る。三角関数で簡単にボールの移動方向と速度の計算はできる。
しかしその速度は遅く、ボールを打ちたい方向にも移動速度が遅いので、ボールはフェイス面にも当たり前に飛ぶ。
ヒールで当たった時の横方向の速度があるので、その分、ボールは右斜め方向に高く飛ぶ。球面の接線の角度が30度の場合、打ち出し角度は簡単な計算では27度ほど。
ボールがヒールに当たってからフェイス面に当たる2度打ち状態になる。それが異音に聞こえる。でも通常の「シャンク」と言われるような酷い当たりではない。
ではこの状態になるのはどの位の範囲だろうか?
ヒールの形状はなだらかな曲面となっており、紙面上、ボールを打つ赤矢印方向とボールが当たる曲面での接線とのなす角は、30度近辺だけが③に該当する。
それ以上小さい角度では横方向のエネルギーが得られず右斜め方向に飛ばないので僅かな異音はするが、②に近いショットとなる。
反対に大きい角度では、前方向のエネルギーが大きいので2度打ちにはならない。④に該当する。
③の状態になるのは、なす角が30度近辺の数ミリの範囲である。その精度で正確にクラブを振り下ろせないと、この状態を作り出すのは難しい。
私の実力では30球打って、やっと③の当たりができた。
では、③のヒールに当てるシャンクを「ヒールシャンク」と命名し、その確率を考えてみよう。
ある程度ゴルフの経験がある人は、殆どアイアンのフェイス面にボールを当てることができるはず。
フェイス面にボールが当てられる範囲をガウス分布(3σ)として考えると、その端に位置するヒールに当たる確率は下左図のように1000回に3回となる。
ヒールに当ててシャンクを打つつもりでスイングしても、同じ技量の人がヒールシャンクを打てる確率は、上右図のように20~30回に1回程度。
シャンクが出始めると、何度もシャンクボールとなることが多い。しかし、上述のようにヒールシャンクは打とうと思っても、確率的に何度も連続で打てるものではない。
ましてや崩れたフォームでは、数ミリの精度が必要なスイングはプロでもできない。通常のシャンクは別の原因で発生していると考えるのが、確率的にも物理的にも妥当である。
「百聞は一見に如かず」。皆さんも実際に練習場に行き、確かめてもらいたい。
3.シャンクボールを打ってみよう。
では通常のシャンクとは何が原因か?これは、実際にシャンクボールを打ってみれば良い。
頻繁にシャンクボールが出るならば、シャンクボールは簡単に再現できなければならないはず。
シャンクはアイアンで起きることが多いので、検証にはアイアンを使用する。少しクラブを短めに持ち、ティアップは行わず、打ちたい方向にアドレスを取る。
シャフトを時計方向に回転させ、フェイス面が大きく右方向を向くようにして、グリップを握り直す。
フェイス面が上を向き、大きく右方向に向いていることを確認し、そのままスタンスの方向にボールを打つつもりでスイングを行う。
当然であるが、ボールはキチンと当たると、フェイスの開く量に応じて右方向に高くボールが飛んでいく。
よくあるシャンクの再現にはもう一工夫が必要となる。
意識的にフェイス面を地面から浮かせて、トップの状態でボールを打つようにする。
本来トップなので、鈍い音と共に、球質が重たく低いボールが打ち出されるのだが、フェイス面を開いている分、球質は軽くなり、音も高い音に変わる。
いわゆるシャンクの異音である。
トップの度合いで状況は変わるが、ボールは右斜め45度方向にライナー性の当たりで飛んでいく。
持ち方を変えているのだから、フォームが崩れる心配は無い。何度打ってもシャンクしか出ない。
シャンクが出るとアセる人が多い。アセって行われるのが早打ち。早打ちはトップになり易く、シャンクはライナー性の当たりが多い。
打てたボールが、異音も球質も打感もいつものシャンクであることを確認するのが重要である。
「百聞は一見に如かず」。これも実際に練習場に行き、確かめてもらいたい。
4.シャンクのインパクトの瞬間を再現しよう
シャンクが打てたら、次は「何故そのようなフェイス面になってしまうか?」を理解すればシャンクの根本的原因が分かる。
「シャンク」はインパクト時のフェイス面の右回転で発生することは説明した。
では、グリップの持ち方も変えずに、どのような状態の時にフェイス面が大きく右回転するのだろうか?
これを理解するには検証が最も手っ取り早い。まず、下左図のようにドライバーを持って、自分のインパクトの瞬間を作ってみる。
ハンドファーストでも普通の打ち方でも下左図のような感じだと思う。
シャンクはクラブヘッドがインパクト時に右に大きく回転している状態。
グリップは持ち替えず、インパクトのフォームの状態でシャフトは動かさず、時計回りに回転だけさせてみよう。
そのためには「左手の回内(左腕を内側にネジル)」が必須である。
またシャフトが動かないように回転させるには、「右手の回外(右腕を外側にネジル)」と「左手関節の背屈(左手首を甲側に曲げる)」、「右手関節の掌屈(右手首を平側に曲げる)」を同時に行う必要がある。
それが下中図。
でも回転角度が大きくなると窮屈さを感じるはず。実際のインパクトでは窮屈なフォームにはならないので、窮屈さを解消する必要がある。
それが上右図であり、「グリップを前に出す」、「右肘関節の屈曲(右肘を曲げる)」、「右肩を下げる」、「左肩を上げる」等を行うと、窮屈ではなくなる。
即ち、このフォームが「シャンク」を引き起こすインパクトの瞬間。
フェイス面は45度右方向に向き、被った(フェイス面が立った)状態となる。
ゴルフのネット情報をよく見る人ならば知っていると思うが、上記は全て「シャンク」を引き起こす原因とされている。
「シャンク」した時の生徒のフォームを見たコーチングプロが、「シャンク」の原因として情報を流しているから。
フェイス面の傾きとフォームの違いが分かり易いように、この検証ではドライバーを使ったが、アイアンでも同じ。
でも上記の「グリップを前に出す」、「右肘関節の屈曲」、「右肩を下げる」、「左肩を上げる」自体は結果的にそういう状態になっているだけ。
それを部分的に直そうとしても簡単には直らない。本質は違うところにある。
何故そのような状態になってしまうかが重要である。
5.シャンクの99%の原因はこれ!
最初に理解する必要があるのは、フェイス面が傾いた状態でボールを打ってしまう理由。
「振り遅れ」や「アウトサイドイン」と答える人が多いと思うが、それは意味が無い。
これらはスイングの状態や軌道を表す言葉。原因や理由の説明にはなっていない。
「何故それが引き起こされるか?」具体的な原因、理由の把握が重要である。
下左図を見て頂きたい。下左図はダウンスイングの時のヘッドの移動方向とフェイス面を示したもの。
ダウンスイングの時は、クラブヘッドの移動方向とフェイス面はほぼ平行で、このままではボールをフェイス面に当てることができない。
クラブヘッドにボールを当てるためには、下右図のように、クラブヘッドの移動方向に対し、フェイス面を直交させる必要がある。
フェイス面を直交させるのに使用するのが左手の回外(左腕を外側にネジル)、右手の回内(右腕を内側にネジル)という動き。
この手の使い方は、ゴルフ用語では「手の返し」と説明されることが多い。
この手の回外、回内の動きはシャフトを回転させる動き。ダウンスイングから打点までにシャフトを手の回外、回内で90度回転させることで、ボールを飛ばすフェイス面を形成する。
フェイス面が大きく右に傾いたまま打点に到達するのが「シャンク」。
言い換えると、打点までに左手の回外、右手の回内動作が不十分であることが「シャンク」の原因である。
では、左手の回外、右手の回内はどのようにすれば行えるか?
これはアドレス状態から、バックスイングをしてみれば分かる。
一般のバックスイングトップとアドレス時で、右肘関節と右手首関節の使い方の違いを確認して頂きたい。
下図のように、バックスイングトップでは右手を回外させて、右肘関節の屈曲(右肘を曲げる動作)と、右手首関節の背屈(甲側に右手首を曲げる動作)が行われているはず。
その右手の動きに連動して、左手の回内も行われている。
ダウンスイング時は、この右肘関節の屈曲を伸展(右肘を伸ばす)し、右手関節を掌屈(右手首関節の背屈を元に戻す)する。
それと同時に左手の回内と右手の回外も戻り(左手は回外し右手は回内)、打点ではフェイス面が形成される。
肩の回転と右肘関節の伸展、回外・回内筋の連動により通常のダウンスイングでは、無意識に左手が回外し、右手も回内している。
ここで問題になるのが、バックスイング時は、左手の回内と右手の回外は自然に必ず行われるのだが、ダウンスイング時は自然には行われないことである。
試しにダウンスイングで、回内した左手を回外させずに、右肘関節の屈曲を伸展し、右手関節を掌屈してみよう。
すると簡単に右肘関節の屈曲の伸展と、右手首関節の掌屈ができる。
下図はシャロースイングで背骨の側屈(背骨を横に曲げる)を想定したダウンスイング。これで2つの打ち方を比較している。
下左図が右肘関節の伸展と右手関節の掌屈だけを行ったときの模式図である。クラブヘッドはインパクト位置に達していない。
それに対して下右図では、右肘関節の伸展と右手関節の掌屈に加え、右手の回内と左手の回外を行った時の模式図である。クラブヘッドがインパクトを超えた位置に達している。
ダウンスイングでは簡単にこの2通りの打ち方ができてしまう。
このバックスイング時の左手の回内とダウンスイング時の左手の回外の差は、回内・回外を行う関節が2つ(肩甲骨と上・下橈尺関節)あることが原因。
その確認のため、バックスイングトップで左肩をあごに近づける動作をやってみよう。
これには左肩甲骨の挙上(肩を上に上げる動作)と上方回旋(肩甲骨をハの字に動かす)が必要で、肩甲骨の構造上左手の回内が必ず行われる。
その時、右手の動きと連動して、左腕の回内を行う関節(上・下橈尺関節)を使った回内も同時に必ず行われている。
しかし、ダウンスイング時は左肩甲骨は下制(肩を下に下げる動作)と下方回旋(肩甲骨を||に戻す)されており、それと同時に左肩甲骨を使った回外動作も行われる。
残ったのは左手の上・下橈尺関節を使った回外である。回外が行われなければ上左図のフォーム、回外が行われれば、上右図のフォームとなる。
即ち、バックスイング時の左手の回内のように、ダウンスイング時の左手の回外は自然には行われない。
バックスイングをするときは、意識しなくても左手の回内は必ず行われるが、ダウンスイングではフェイス面を戻す左手の回外が無くてもクラブを振り下ろせしてしまう。
ダウンスイングで左手の回外が行われないと、フェイス面は回転しない。これがシャンクの根本的原因である。
実はダウンスイング時に上・下橈尺関節を使って左手を回外し、右手を回内させるのには、下図のように肩の回転が重要な役割を果たしている。
6.シャンクになる状況と起きた時の直し方
7.何故、アイアンやアプローチでシャンクは起きやすいのか?
では、そのクラブを両腕で持った場合はどうだろうか?それを簡略的に表したのが下図である。
慣性力について、ダウンスイングを3つのクラブヘッド加速ゾーンに分けた図で説明する。
一つ体験談を紹介しよう。私は頚椎症性筋萎縮症という病気で軸手に力が入らない。よって、練習ボールを打つ回数にも制限がある。50球程打つと軸手が上がらなくなる。
他のゴルフの技術についても筋肉・関節の動きで理解してみませんか?
を読んでみて下さい。
手の回内には筋円回内筋や方形回内筋、回外には回外筋・上腕二頭筋が使われるが、これらの筋肉はそれ程力強く、瞬発力がある訳ではない。
力の強い肩の回転と右肘関節の伸展の連動があって、初めてダウンスイング時の素早く力強い手の回内、回外動作が実現できている。
ところが肩の回転が弱いと、その連動が崩れ、左手の回外量、右手の回内量が不足する。左手の回外量不足がフェイス面の傾きとなり、シャンクになってしまう。
では、肩の回転不足はどのような状況で起きるか?例を挙げてみよう。
①手首を意識的に速く振り下ろすと連動が崩れ、手の返しを行うつもりでも実際には返せてない。
②練習のし過ぎや、コース後半の下半身・腰の疲れでも肩の回転の基となる腰の回転不足や捻転不足が起きる。
③アンジュレーションがある場所では体重移動が難しく、腰の回転不足が起きる。
④アプローチはハーフショットが多い。肩の回転、右肘の伸展、左手の回外のどれか一つでもスイングが成り立ち、連携が取り難い。
⑤極端なハンドファースト。クラブヘッドより手首が進行しすぎると、関節の構造上、回内・回外ができなくなる。
⑥手の力による強引な振り下ろしによる加速の継続。クラブヘッドが加速中は左手の回外とは逆方向に慣性力が働き、左手の回外を妨げる。
肩の回転は低下しても、クラブは重力を利用して振り下ろすので速度は落ちにくい。その結果、筋肉・関節の連携は崩れてしまう。
右肘関節を曲げた状態からの伸展と、右手首関節の掌屈だけならば、肩の回転とは無関係にできてしまう。回外量が少なくなっていても気が付かない。
もし、意識的に手を返そう(フェイス面を回転させよう)とすると、回内、回外に使う筋肉は、筋円回内筋や方形回内筋、回外筋・上腕二頭筋だけ。
これらの筋肉だけを使った回内、回外は手をこねる動きであり、力も瞬発力も無い。速いダウンスイング中にこれらの筋肉だけでは必要な左手の回外はできない。
「しっかりクラブは振り下ろしているし、手の返しも行っているのに何故シャンク?」となってしまう訳である。
筋肉・関節の連動が崩れ、シャンクを発生させる要因はこのようにコース上にたくさんある。
もう少し分かり易くシャンクの軌道を示したのが下のスイングを上から見た写真の模式図。
正常なスイングの場合、体の回転分60度と手の返し分120度。インパクトはその半分の位置なので、(60+120)/2 = 90度の回転となる。
一方、シャンクの場合、体の回転分60度と右肘関節の伸展分30度しかクラブが回転しない。インパクト位置は(60+30)/2 =45度。
正しくシャンクのボール軌道と一致する。
下の右図は通常のスイングとシャンクスイングでのシャフトの抜ける方向を示している。シャフトが寝ていたら、回外不足のシャンクである。フェイス面も寝たまま。
よって、「シャンクの直し方」で意識することは、ダウンスイング時、この肩の回転と手の返しの連携と、フィニッシュでシャフトが立っていることの確認である。
シャンクになった時、インパクト位置でボールをキチンと打てない原因を考え悩むより、以下の素振りを実行する。
ダウンスイングで肩の回転と手の返しの連携を意識し、インパクト後、シャフトが体の前(打つ方向)まで到達した時、しっかりシャフトが立っているように素振りをする。
ボディターンを行いながら手の返しができていれば、体が前を向きシャフトが立ったフィニッシュになる。途中のインパクトではしっかりフェイス面が作られている。
ただ、これは練習場でできても、コースでできているとは限らない。シャンクになり難いフォーム、なり易いフォームが存在する。
更に、コースでアンジュレーションが大きい場所でのスイング、アプローチのスイングにはシャンクになり易い条件が揃っている。
ボディターンが少ないと体は前を向かず、シャフトが寝て手首だけが前にある状態になる。手の返しが無いと体は前を向いてもシャフトは寝たままである。
フィニッシュ時にシャフトが寝ていれば、インパクト時は確実にフェイスが右を向いている。シャンクしか打てなくなる。
一方、手の返しだけを意識すると手をコネル手打ちとなる。シャンクは防げても、早打ち、チーピンとなり、ミート率が下がることになる。
どんな状況でも素振りで必要な肩の回転量を維持し、それに連携した手の返しが行えていれば、シャンクは確実に直すことが可能となる。
連携を重視するには、肩の回転とフィニッシュのシャフトの方向に注意し、手の返しが無意識に行われるぐらいで丁度良い。キーワードは「シャフトを立てる」である。
まだシャンクの原因を信じられない方は、「では何故ドライバーやウッドではシャンクが出ず、アイアンで出るの?」
「アイアンにはフェイス面近くにシャフトの付け根(ホーゼルやヒール)があるから、シャンクになるのでは?」と思うはず。
これにもしっかりと理由がある。それには少しクラブについての理解が必要となる。
下の写真はドライバーと58度の重心位置と重量を確認したものである。ドライバーは280g、58度は414g。重さがかなり異なっている。
グリップ中心からクラブヘッドまでの距離と、重心までの距離はドライバーが100cm、72cm、58度が76cm、60cmである。
地球にある物体は全て重力の影響を受けているので、重量に関わらず自然落下で1秒間に9.8m落下する。
両腕の重量は5kgほどある。肘あたりに重心があり、肩で回転軸につながっていると考え、上記の数値を書き込んでいる。
すると、左肩を支点、左手の重心を力点、クラブの重心を作用点としたテコの原理が成り立つ。右手はサポートを行うが、右肘が曲がっているので対象外となる。
細かい計算には角速度などが必要だが、簡単な計算で結論を言うと、クラブヘッドはドライバーが自然落下に対し4.75倍、58度が4.07倍の速度で移動する。
これはゴルフクラブの重量フローと言い、異なったクラブでも振った感触が近く、長いシャフトのクラブが速くスイングできるように工夫されている。
短いアイアンほどシャンクが出やすい理由は、この重量フローによる各クラブの慣性力に起因する。慣性力とはクラブがそこに留まろうとする力である。
慣性力は重量が重たいほど大きく、支点から重心位置までが長いほど大きい。
ドライバーと58度の慣性力比を計算すると1:1.36で、58度の方が慣性力が3~4割ほど大きい。
下左図はバックスイングトップから肩甲骨を使ったクラブヘッドの加速ゾーン。腕にかかる重力を利用できる。
下中図はクラブヘッドを下に振り下ろすのでクラブヘッドにかかる重力を利用できる。加速方法は右肘関節の伸展。
下右図は手の返し(右肘関節の伸展、左手の回外、右手の回内)によるクラブヘッドの加速ゾーン。
クラブヘッドを加速している期間はクラブを元の位置に留めようとする慣性力が働いているのが分かる。
慣性力が大きいと、各ゾーンでクラブヘッドが遅れ、手の甲が先行して動いてしまう力が大きくなり、手の返しの障害となる。
即ち、慣性力が高い短いクラブほどシャンクを起こす可能性が高くなる。
特に、アプローチは短いアイアンを使う上にハーフショットである。肩の回転、右肘の伸展、左手の回外のどれか一つでもスイングが成り立つ。
ダウンスイング時は慣性力が高い状態で、筋肉の連携が取り難い状況である。シャンク発生の原理をしっかり理解していないと、シャンクの泥沼から抜け出せなくなる。
少し休憩して力が回復すれば打てるので、それを繰り返す。
ある日、前日に軸手を使う作業をして、当日息子の引っ越しの手伝いをしてから打ちっ放しの練習に行った。
いつもの通り、2球ずつ各クラブの練習をして、それ以降調子の良くないクラブの練習をするのだが、9番アイアンで練習するとシャンク。後のボールは全てシャンク。
原因は軸手の回外筋。腕を捻じろうとしても、連日の作業の影響か全く力が入らない。回外筋に力が入らないことで、筋肉の連動が崩れて手の返しができなくなっていると判断した。
そこで色々なクラブで確認したところ、ウッド系は少しスライスするがちゃんと当たる。完全にシャンクしかでないのはショートアイアン。
打ち終わった時にシャフトが寝ており、頑張って立てようと思っても慣性力に負けて力が入らず立てられない。
しかし、ショートアイアンを使ったアプローチでは立てられる。ハーフスイングでスイング速度が遅いので、軸手でない方の回内筋のサポートでシャフトを立てているのだろう。
するとボールはシャンクせず、しっかり前に飛ぶ。
勿論、腕に力が入る時は、肩の回転と筋肉の連動を意識するだけでシャンクが出ることは無い。でも筋肉が連動できない時は簡単にシャンクが出てしまう。
と言うか、ショートアイアンのフルスイングだとシャンクしか打てなくなる。
ドライバー、ウッドがスライスになる原因も説明できる。左腕を回外しない時のインパクトを面を確認すれば良い。
シャフトが長い分、インパクト時のフェイス面は20~30度右を向いている感じ。フェイス面も大きいのでトップでは無く、ライナー性の大きく曲がるスライスになる。
それ以上大きく右に飛んでいくのは、フェイス面の先端に当たるトウシャンク。頭が大きく動いたスイングで起き易い。
これはドライバーの先にボールを置いてアドレスをとれば、トップと同じ原理なので比較的再現し易い。ヒールシャンクよりは打つのは簡単である。
普通の人でもシャンクの原理を理解していなければ、同じ状態(筋肉が連動しない)になりシャンクを連発する人は多くいると思う。
ここまで読んでも、あなたはまだ発生確率1%以下のヒールシャンクを直す努力をしますか?
構える位置をネックから離す、肩を前に出さない、アウトサイドインスイングにしない、膝を前に出さない等・・・
全てのシャンクをヒールシャンク前提で、解決策を提案している情報を信用しますか?
上記のような対策をやれば発生確率1%のヒールシャンクは改善しますが、99%の連続して発生するようなシャンクは直りません。
このように、ゴルフの技術に関して具体的な筋肉・関節の動きで理解し、独学で行えるゴルフに興味がある方は
またこのURLに書かれた内容に興味を持ち、「関節と筋肉で考えるゴルフ」をやってみたい方は以下のFacebookにアクセスしてみて下さい。
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但し、私は頚椎症性筋萎縮症で肩が上がらない状況、キャリア8年という事を理解して頂いた上で、本URLに共感・納得して頂いた限定です。
もし、指導開始15分で、「指導方法が気に入らない、生理的に合わない」等があれば、出張実費以外のお金は頂きません。
シャンクだけでなく、他にもゴルフにはゴルフスイングの基本的なことから、コック、シャロースイング、ノーコック、スライス、パター等、曖昧な内容のものが多い。
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